適応障害カウンセリング

適応障害とは社会生活・家庭生活の中で起こるストレス障害であり、人によっては至って普通の出来事や体験であるが、適応障害者には大変な苦痛である。ウツ状態になり易く引きこもりへの温床となる。幼少期の親子関係に起因する

目次

適応障害とは?心と体が発するSOSサインに気づく

「ストレスと不安」

適応障害は、私たちの心と体が環境の変化に対応しきれず、SOSのサインを発している状態です。特定のストレス要因(ストレッサー)によって心身に不調をきたし、日常生活に大きな支障をきたします。

進学、就職、転職、結婚、転居など、人生の節目には必ずと言っていいほど環境の変化が伴います。こうした変化に適応しようと奮闘する中で、心に負担がかかり、やがて適応障害として症状が現れることがあります。

「ストレス障害」の一つに分類されますが、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のように命の危険を感じるほどの強い衝撃的な出来事が原因で起こるわけではありません。むしろ、人間関係のトラブル、仕事のプレッシャー、家族の問題など、一見些細に思えるような日常的なストレスの積み重ねが引き金になるケースが多く見られます。

適応障害は、ストレスの原因が取り除かれたり、軽減されたりすれば、症状が改善されることがほとんどです。しかし、原因に気づかなかったり、対処法がわからなかったりすると、苦しい状態が長引いてしまいます。

あなたも他人事じゃない?適応障害になりやすい人の特徴

「孤立と孤独」

適応障害は誰でもなりうる可能性がありますが、特に陥りやすい性格や状況があります。

完璧主義で生真面目な人

「〜すべき」「〜しなければならない」といった考えが強く、自分にも他人にも厳しい人は、完璧に物事をこなせないと自分を責めてしまいがちです。予期せぬトラブルや環境の変化に直面すると、そのギャップから強いストレスを感じてしまいます。

周囲に合わせすぎてしまう人

自分の気持ちを抑え、周りの期待に応えようと無理をしてしまう人も注意が必要です。本当はつらいのに「大丈夫」と振る舞うことで、SOSのサインを見過ごしてしまい、限界を超えてしまうことがあります。

孤立しやすい状況にいる人

転勤や転校などで新しい環境に身を置き、相談できる人が近くにいない状況もリスクを高めます。一人で悩みを抱え込み、孤立感が深まると、ストレスが膨れ上がり、適応障害を発症しやすくなります。

変化を苦手とする人

「今のままがいい」と変化を嫌う人は、新しい環境に馴染むこと自体が大きなストレスになります。新しい人間関係や仕事内容、生活習慣に慣れることができず、心身のバランスを崩してしまうことがあります。

適応障害が引き起こす心と体のSOSサイン

適応障害の症状は、心身に多岐にわたって現れます。個人差が大きく、また日によって変動することも特徴です。

感情のコントロールが難しくなるサイン

  • 抑うつ気分、不安感:気分が沈み、何に対しても興味が湧かなくなる、あるいは漠然とした不安に常に苛まれる。
  • イライラ、怒りっぽくなる:些細なことでイライラしたり、周りの人に感情をぶつけてしまったりする。
  • 泣き出してしまう:理由もなく涙が溢れてくる、感情の起伏が激しくなる。

行動に現れるサイン

  • 仕事や学業に集中できない:注意力が散漫になり、普段ならできる簡単なミスが増える。
  • 人との交流を避ける:友人や家族からの連絡に返信しなくなる、引きこもりがちになる。
  • 問題行動:衝動買い、暴飲暴食、過度な飲酒、ギャンブルなど、ストレスを紛らわすための行動が増える。

体に現れるサイン

  • 頭痛、肩こり:緊張が続き、身体が凝り固まる。
  • 動悸、めまい、倦怠感:身体がだるく、朝起きるのが辛くなる。
  • 不眠、食欲不振:夜眠れなくなったり、食事が喉を通らなくなったりする。

これらの症状は、誰もが経験する一時的な不調と似ているため、「甘えなのでは?」「気のせいだろう」と見過ごされがちです。しかし、症状が1ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性を疑ってみる必要があります。

適応障害とうつ病、何が違う?正しい理解が回復への第一歩

適応障害とうつ病は、よく似た症状が現れるため、混同されやすい病気です。しかし、根本的な原因と治療法に大きな違いがあります。

適応障害は「原因が明確」

適応障害は、特定のストレッサー(ストレスの原因)が存在します。その原因から離れたり、環境を変えたりすれば、症状が改善に向かうことが大きな特徴です。例えば、仕事の人間関係で悩んでいる人が、配置転換や休職でストレス源から離れると、嘘のように症状が軽くなることがあります。

うつ病は「原因が不明確」

うつ病は、特定のストレスがなくても発症することがあり、気分が落ち込むことが主な症状です。環境を変えても症状が改善しにくい傾向があります。

診断の基準としては、適応障害の場合、ストレッサーに直面してから3ヶ月以内に症状が現れ、ストレス源がなくなると6ヶ月以内に症状が収まるとされています。この点を理解しておくことが、ご自身の状態を客観的に見つめ、適切な対処法を見つける上で重要です。

適応障害の診断基準と気づきにくい理由

「自分は適応障害かもしれない」と感じても、診断のプロセスは簡単ではありません。

診断基準

国際的な診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、以下の4つの項目すべてを満たす場合に適応障害と診断されます。

  1. 特定のストレス要因への反応として、3ヶ月以内に感情または行動面での症状が現れる。
  2. ストレッサーへの反応が、予想される範囲を超えて強いものである。
  3. 社会生活や職業・学業に著しい支障をきたしている。
  4. 症状が、他の精神疾患(うつ病、PTSDなど)では説明できない。

気づきにくい理由

適応障害は、身体の不調(頭痛、倦怠感、不眠など)が先に現れることが多いため、「風邪かな?」「疲れているだけだ」と自己判断し、内科を受診してしまうケースが少なくありません。

また、「頑張りが足りない」「気持ちが弱いからだ」と自分を責めてしまう人も多くいます。適応障害は、周囲からも「ただの甘え」「怠けているだけ」と誤解されがちです。そのため、心療内科や精神科を受診するのをためらい、症状が悪化してしまうことがあります。

しかし、適応障害は決してあなたの意志の弱さではありません。心と体が正常に機能し、現状に対応しようと頑張った結果、キャパシティオーバーを起こしている状態なのです。

専門家と一緒に見つける適応障害の根本的な解決策

「専門家との対話やサポート」

適応障害の治療は、大きく分けて2つの柱から成り立ちます。

  1. ストレスの原因を軽減・除去する
  2. ストレスへの適応能力を高める

逃げるだけでは根本解決にならない

ストレスの原因から一時的に離れる(休職、休学など)ことは、心身を休ませるために非常に有効な手段です。しかし、問題の根本的な解決にはなりません。多くの場合、同じようなストレスに直面した際に、再び同じ症状を繰り返してしまう可能性があります。

カウンセリングによる「根本療法」

大阪聖心こころセラピーでは、単に症状を抑えるだけでなく、物事の捉え方や考え方の根本から見直す「根本療法」を提唱しています。

カウンセリングでは、まずカウンセラーと一緒に、何がストレスの原因になっているのかを深く掘り下げていきます。そして、ストレスに対応しやすいように、あなたの「認知の歪み」を修正していきます。

「認知行動療法」は、この「根本療法」の中心となるアプローチの一つです。認知行動療法では、ストレスとなる出来事に対して、あなたの考え方(認知)がどのように影響しているのかを客観的に分析し、より柔軟な考え方を身につけていきます。

たとえば、「完璧に仕事をこなさなければならない」という考え方が、自分を苦しめていると気づいたとします。カウンセリングを通して、「完璧でなくても、できる範囲で頑張ればいい」というように、少しずつ考え方を変えていきます。そうすることで、同じストレスに直面しても、過度に苦痛を感じることなく対処できるようになります。

適応障害を克服するための具体的なステップ

「希望と回復への道筋」

適応障害を乗り越え、新しい一歩を踏み出すためには、いくつかのステップを踏むことが有効です。

ステップ1: 自分の状態を客観的に認識する

まずは「なぜ今、こんなに辛いのか?」を自分自身で理解することから始めましょう。

  • 何がストレスの原因になっているのか?(仕事、人間関係、家庭など)
  • どんな症状が出ているのか?(不眠、食欲不振、気分の落ち込みなど)
  • いつから症状が続いているのか?

これらの点をノートに書き出すだけでも、漠然とした不安の正体が見えてきます。

ステップ2: ストレスから距離を置く(必要な場合)

ストレスの原因が明確な場合は、一時的にそこから距離を置くことも大切です。

  • 仕事:上司に相談し、業務量を減らしてもらう、部署異動を検討する、休職する。
  • 学校:先生や親に相談し、登校時間を調整する、休学する。
  • 家庭:家族に悩みを打ち明け、問題解決に向けて話し合う。

ただし、これはあくまで一時的な対処法です。根本的な解決には、カウンセリングと併用することが重要です。

ステップ3: 信頼できる人に相談する

一人で抱え込まず、信頼できる人に話してみましょう。

  • 友人や家族:正直な気持ちを話すことで、気持ちが楽になることがあります。
  • 上司や先生:状況を共有することで、周りの理解や協力を得られる可能性があります。
  • 専門家:カウンセラーや心療内科の医師は、あなたの状況を専門的な視点から分析し、具体的な解決策を一緒に探してくれます。

ステップ4: 根本的な考え方を変えていく

カウンセリングを通して、ストレスへの耐性を高めるための考え方を身につけていきます。

コミュニケーション能力の向上:自分の気持ちを上手に伝えたり、相手の気持ちを理解したりする力を養う。

完璧主義からの脱却:「100点満点」ではなく「80点でもOK」と自分を許容する。

自己肯定感の向上:「自分はダメだ」ではなく「自分は頑張っている」と認め、自己肯定感を高める。

適応障害を放置するとどうなる?潜在的なリスク

適応障害は、放置するとより深刻な問題を引き起こす可能性があります。

うつ病への移行

適応障害の症状が長期間続く場合、うつ病へと移行するリスクが高まります。うつ病は、適応障害とは異なり、原因が取り除かれても症状が改善しにくい特徴があります。治療期間も長くなり、日常生活への復帰がより困難になる可能性があります。

依存症の併発

ストレスを紛らわすために、アルコールやギャンブル、買い物などに依存してしまうことがあります。これらの依存症は、一時的な気晴らしにしかなりません。根本的な解決にはならず、むしろ新たな問題を引き起こし、生活全体を破綻させてしまうリスクがあります。

身体疾患の悪化

適応障害による不眠や食欲不振、自律神経の乱れは、身体の免疫力を低下させ、様々な病気を引き起こす可能性があります。高血圧、糖尿病、胃腸障害など、心身両面への悪影響が懸念されます。

聖心こころセラピーが目指す「許容・協調型自己形成」

大阪聖心こころセラピーでは、単に症状を和らげるだけでなく、あなたが二度と同じ問題で立ち止まらないように、生き方そのものを変えていくお手伝いをしています。

ストレスに「勝つ」のではなく「受け流す」生き方

ストレスを「敵」として捉え、それに「勝とう」と頑張るのではなく、「適度なストレス」として受け入れ、上手に「受け流す」生き方を目指します。

完璧にこなそうとするのではなく、「できる範囲で頑張ろう」と自分を許す。人に完璧を求めるのではなく、「こういう考え方の人もいるんだな」と多様性を認める。そうすることで、あなたは不要なストレスから解放され、心にゆとりが生まれます。

自分を「変える」ことで環境も変わる

「周りの人が変わってくれない」「環境が変わらない」と嘆くのではなく、まず自分自身が変わっていくことが大切です。あなたの考え方が変われば、行動も変わり、それに伴って周囲の人や環境との関係性も変化していきます。

自分自身がストレスに強くなれば、今まで苦痛だった出来事が、そうでもなくなってきます。新しい環境や人間関係にも、臆することなく踏み出せるようになります。

専門家と一緒に解決する適応障害の悩み

適応障害は、自分一人で解決しようとすると、かえって深みにはまってしまうことがあります。そんな時は、専門家の力を借りることも一つの選択肢です。

カウンセリングのメリット

安心できる相談相手:守秘義務が守られた安全な空間で、誰にも言えなかった悩みや苦しみを安心して話すことができます。

客観的な視点の獲得:自分の考え方の癖や、問題の根本原因を客観的に見つめ直すことができます。

専門的なアプローチ:認知行動療法など、科学的に効果が証明された心理療法を受けることができます。

まずは一歩踏み出してみませんか?

「穏やかな休息」

「こんなことでカウンセリングを受けてもいいのだろうか…」「恥ずかしい…」と、一歩を踏み出すことをためらっている方も多いかもしれません。しかし、あなたのその「違和感」や「つらさ」は、心と体が発している大切なメッセージです。

適応障害は、適切な対処と療法を行えば、短期間で改善する可能性が高い病気です。症状が長引いてうつ病などを併発する前に、早めの対処が何より重要です。

大阪聖心こころセラピーでは、適応障害に精通したカウンセラーが、あなたの悩みに寄り添い、問題解決に向けて丁寧にサポートします。

環境や状況に左右されない、許容・協調型自己形成へ。

大阪で適応障害の悩みや相談のカウンセリングは聖心こころセラピーへお越しください。

私たちは、あなたがより良い生活を送れるよう、全力でサポートさせていただきます。安心してお気軽にご相談ください。

参考文献・参考資料

  • 池田朝彦(2019) 日本における「適応障害」患者数の増加 社会政策学会誌『社 会政策』 第12巻 第2号
  • 平島奈津子ほか(2023) 適応障害(適応反応症)の予防と対策 医歯薬出版株式 会社『医学のあゆみ』 287巻 4号
  • アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神 疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院

この記事を書いた人

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

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