トラウマカウンセリング

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「心の傷」それをひとつとして持たない人は皆無でしょう。多くの心の傷は、時間の経過や周囲からの支えによって徐々に和らぐことがあります。しかし、体験の内容や状況によっては自然に回復しにくく、強い恐怖や無力感の記憶が「トラウマ」として心に残り続け、長期にわたり生活や人生に影響を及ぼすことがあります。
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終わらない「つらい記憶」と「恐怖」の連鎖:トラウマとどう向き合うか

「孤独と向き合う」
トラウマという言葉は、私たちの日常会話でもよく使われます。
「小さい頃の失敗がトラウマになって、〇〇ができなくなった」
「満員電車に乗るのがトラウマ」
このような使い方をされることがありますが、本来のトラウマはもっと深刻なものです。心理学や精神医学の世界では、トラウマは「心的外傷」と呼ばれ、私たちの心に深く、そして長期にわたって影響を及ぼす「こころの傷」を意味します。
心の傷は目には見えませんが、その苦しみは計り知れません。私たちは日々、さまざまなストレスを感じながら生きていますが、心身が健康な状態であれば、大きなストレスも時間をかけて乗り越えることができます。しかし、自身の対処能力をはるかに超える出来事に直面したとき、その経験は「トラウマ」として心に刻まれ、人生のあらゆる側面に影響を及ぼし始めるのです。
この文章では、トラウマが私たちの心にどのような影響を与えるのか、なぜ、そしてどのようにしてトラウマになるのか、そして、その苦しみから解放され、前向きな日々を取り戻すために私たちができることについて、詳しく解説していきます。
トラウマってなに?:人生を深く変える「心的外傷」
トラウマ(心的外傷)は、私たちの人生観や世界観を根底から揺るがすような、非常に衝撃的な出来事によって引き起こされる心の傷です。それは、私たちが持っている「世界は安全で、自分は守られている」という根源的な安心感を打ち砕きます。
トラウマの原因となる出来事
トラウマの典型的な原因としては、以下のようなものが挙げられます。
- 自然災害:地震、津波、台風、洪水、火山噴火など
- 人為的な災害や事故:火災、交通事故、飛行機や電車などの事故
- 犯罪被害:強盗、性的暴行、傷害事件など
- 生命を脅かす出来事:重篤な病気や怪我、瀕死の体験
- 対人関係の出来事:虐待(身体的、精神的、性的)、いじめ、ハラスメント
- 大切な人との死別:突然の死、自殺など
これらの出来事の多くは、私たちが制御できないものです。人は自分の対処能力を超えるような脅威を前にしたとき、「無力感」や「虚無感」を感じ、深く絶望します。この感情があまりにも大きすぎる場合、理性では処理しきれず、その記憶は潜在意識の奥底にしまい込まれてしまいます。
隠された記憶が引き起こす「PTSD」
トラウマとなる出来事の記憶は、すぐに症状として現れるとは限りません。数週間から数年後に突然、悪夢やフラッシュバックという形で蘇り、私たちの心身に様々な影響を及ぼし始めます。この状態を心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼びます。
PTSDの症状には、大きく分けて以下の4つがあります。
- 侵入症状(再体験):トラウマとなった出来事が、あたかも今そこで起きているかのように鮮明に思い出されるフラッシュバックや、悪夢、関連する出来事を思い出させるものに触れると強い苦痛を感じるなど。
- 回避症状:トラウマを思い出させる場所、人、状況、会話、感情などを意図的に避けようとすること。
- 認知と気分の陰性変化:出来事の一部を思い出せなくなる、自分や他人、世界に対する否定的な考えを持つ、希望を失う、興味や関心の低下など。
- 覚醒と反応性の変化:些細なことでイライラしたり、怒りっぽくなったりする、常に警戒している状態になる、睡眠障害、集中力の低下など。
これらの症状は、私たちの日常生活に大きな支障をきたし、心身ともに疲弊させていきます。トラウマを放置しておくと、うつ病や不安症、摂食症、依存症など、他の精神疾患を併発するリスクも高まります。
あなたのトラウマはどのタイプ?:トラウマの4つの分類

「複雑に絡み合う傷や重荷」
トラウマとなる出来事には、さまざまな種類があります。出来事の性質や影響の受け方によって、トラウマはいくつかのタイプに分類されます。自分のトラウマがどのタイプに当てはまるのかを知ることは、問題の根源を理解し、適切な対処法を見つける第一歩となります。
トラウマの4つの分類
トラウマは一律に分類できるものではありませんが、理解を助けるために、しばしば次のような代表的な種類に分けられます。
- 身体的外傷:事故や怪我、病気、暴力による心身へのダメージ
- 言語的外傷:暴言、誹謗中傷、いじめなど言葉による傷つき
- 性的外傷:性的虐待、性暴力などによる深刻な被害
- その他の体験:死別、災害、事件の目撃などによる心的苦痛
これはあくまで理解を助ける整理であり、実際には複数の要素が重なって影響することも少なくありません。
複雑性トラウマ(複合性トラウマ)とは?
トラウマは、一度の衝撃的な出来事だけで起こるとは限りません。例えば、長期にわたるいじめや家庭内での虐待、慢性的なハラスメントなど、繰り返し、あるいは継続的に心に小さな傷が刻まれることで引き起こされるトラウマがあります。
このような、長期間にわたる複数回の外傷体験によって引き起こされるトラウマは「複雑性トラウマ」と呼ばれます。複雑性トラウマは、自己肯定感の低さ、自己嫌悪、人間関係の問題、感情のコントロールの難しさなど、より複雑で多様な症状を引き起こす傾向があります。
これは、外傷体験が慢性的に続くことで、心身が常にストレスに晒され、健全な発達が阻害されてしまうためです。特に、子ども時代の虐待やネグレクトは、その後の人格形成や社会生活に深刻な影響を及ぼします。
心の傷は目に見えない:なぜトラウマは理解されにくいのか
「そんなこと誰にでもあるよ」
「考えすぎだよ、もっとポジティブに」
「お前に根性がないからだ」
トラウマを抱える人が、勇気を出して自分の苦しみを打ち明けたとき、このような言葉で突き放されることがあります。これは、トラウマが「こころの傷」であり、外からは見えないためです。
同じ出来事を経験しても、誰もがトラウマを負うわけではありません。その人の性格、これまでの経験、ストレスへの耐性、周囲のサポート体制など、さまざまな要因が影響します。
心の傷を理解してもらえない経験は、さらに深い傷となってしまいます。これを「外傷体験の二次被害」といいます。トラウマは、その体験そのものもつらいものですが、周囲の無理解や偏見によって、より苦しいものになってしまうのです。
終わらない悪夢:トラウマが人生にもたらす影響

「フラッシュバックと心の混乱」
トラウマは、私たちの意識から無理やり追いやられた記憶です。しかし、無理に蓋をした記憶は、消えてなくなるわけではありません。潜在意識の奥底に閉じ込められたまま、何かの拍子にフラッシュバックとして現れたり、特定の出来事や場所に対して過剰な反応を引き起こしたりします。
トラウマを抱えていると、以下のような問題が起こりやすくなります。
1.人間関係の問題
トラウマは、対人関係に大きな影響を与えます。トラウマを負った人は、他人を信用できなくなったり、過度に警戒したり、逆に、相手に依存しすぎたりすることがあります。
特に複雑性トラウマを抱える人は、親や身近な人との関係の中で傷ついた経験から、自己肯定感が低く、自分には価値がないと思い込んでしまいます。そのため、相手に受け入れてもらおうと過剰に努力したり、感情や記憶を無意識に押し殺したりするようになります。その結果、自己嫌悪に陥ったり、自己破壊的な行動をとったりすることもあります。
また、自分が受けたのと同じ仕打ちを、無意識のうちに自分の子どもや周囲の人に対してしてしまう「負の連鎖」に陥ることもあります。
2.フラッシュバックと回避行動
トラウマの代表的な症状にフラッシュバックがあります。これは、過去のつらい体験が、まるで今起きているかのように鮮明に蘇る現象です。
例えば、交通事故がトラウマになった人は、車のエンジン音を聞いただけで当時の恐怖が蘇ったり、車に乗れなくなったりすることがあります。フラッシュバックは、強烈な不快感や精神的な不安定さを引き起こします。
そのため、トラウマを抱える人は、フラッシュバックを引き起こす可能性のある場所や状況を無意識に、あるいは意識的に避けるようになります。これは回避行動と呼ばれます。回避行動は、一時的に安心感を得ることができますが、根本的な解決にはなりません。それどころか、活動範囲が狭まり、社会生活を送ることが難しくなってしまうこともあります。
3.慢性的な心身の不調
トラウマは、精神的な苦痛だけでなく、身体的な不調も引き起こします。
- 頭痛、めまい、吐き気
- 慢性的な疲労感
- 不眠症
- 過呼吸
- 食欲不振、過食
- 身体の震え
これらの症状は、トラウマによって自律神経が乱れ、心身が常に緊張状態にあるために起こります。
トラウマは、目に見えない形で私たちの心身に深く影響を与え、人生を生きづらくさせます。しかし、その苦しみから解放され、心穏やかな日々を取り戻すことは十分に可能です。
誰にも相談できないあなたへ:トラウマを抱えることは「心が弱い」わけではない
トラウマを抱える人の中には、「自分が弱いからだ」「根性が足りないからだ」と自分を責めてしまう人が少なくありません。しかし、それは大きな間違いです。
トラウマは、その人の心の強弱とは関係ありません。人の心は、それぞれに違う感度を持っています。ある人にとっては耐えられるストレスでも、別の人にとっては耐え難いほどの衝撃となることは珍しいことではありません。
トラウマを抱えていることは、あなたが弱いからではなく、あなたが経験した出来事が、あなたの心の許容量をはるかに超えるほどに、過酷なものだったという証拠です。
自分を責める必要はありません
事故や事件、いじめ、虐待など、トラウマの原因となった出来事に対して「自分にも非があったのではないか」と考えてしまう人もいます。中には、周囲から「お前が悪い」と非難されるケースもあります。
しかし、トラウマになるような出来事の多くは、誰か(あるいは何か)の理不尽さによって引き起こされるものです。あなた自身に落ち度があったとしても、それがトラウマを引き起こすほどの過酷な体験の原因にはなりません。自分を責める必要は全くありません。
トラウマを乗り越えるために:一人で悩まず専門家を頼る選択肢

「回復への道のり」
トラウマを乗り越えるのは、決して簡単なことではありません。一人で抱え込み、解決しようとすればするほど、より深い苦しみに陥ってしまうこともあります。
「トラウマを克服するためには、トラウマと正面から向き合うべきだ」という考え方もありますが、これは非常に危険です。無理にトラウマと向き合おうとすれば、フラッシュバックや再体験によって、さらなる精神的なダメージを受ける可能性があります。
大切なのは、無理に頑張ることではなく、専門家のサポートを得ながら、安全な環境で少しずつトラウマと向き合っていくことです。
1.トラウマを客観的に「知る」
トラウマを克服するためには、まず自分のトラウマが何なのかを客観的に知ることが重要です。
- 何がトラウマの原因となったのか?
- その出来事は、自分の心にどのような影響を与えているか?
- どのような症状が出ているか?
これらのことを理解することで、問題の根源が明確になり、どう対処すれば良いのかが見えてきます。
2.安心できる環境で「話す」
一人でトラウマを抱え込んでいると、その記憶は何度も蘇り、つらく感じるものです。誰かに話すことで、心の中のモヤモヤした感情を外に吐き出し、気持ちを少し楽にすることができます。
しかし、友人や家族に話しても理解してもらえず、かえって傷つくこともあります。トラウマを抱えている人の気持ちを深く理解し、寄り添うことができる専門家(心理カウンセラーや精神科医)に相談することが、最も安全で確実な方法です。
3.トラウマに有効な心理療法
トラウマは、時間が経てば解決するものではありません。専門的なアプローチで、心の傷をケアし、トラウマを克服していく必要があります。トラウマ治療に有効な心理療法には、以下のようなものがあります。
- カウンセリング:心の内を専門家と話すことで、気持ちの整理をつけたり、認知の歪みを修正したりします。
- 認知行動療法(CBT):トラウマに関連する思考や感情、行動のパターンを特定し、より健康的なものに変えていく治療法です。
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法):トラウマ記憶を処理し、その苦痛を軽減するための心理療法です。
- ヒプノセラピー(催眠療法):催眠状態を利用して、潜在意識に働きかけ、トラウマの原因を特定したり、記憶の再構築を促したりします。
大阪聖心こころセラピーでは、これらの心理療法を、お一人おひとりの状態に合わせて複合的に組み合わせることで、トラウマの根本的な解決を目指します。
新しい人生を歩むために:トラウマを成長の糧とし、しなやかな生き方へ

「しなやかに生きる」
トラウマは、私たちの人生に深い影を落とします。しかし、トラウマを乗り越えた先には、以前よりも強く、そしてしなやかになった自分が待っています。
トラウマと向き合い、克服するプロセスは、自分自身を深く知る旅でもあります。この旅を終えたとき、あなたは「あの時こんなに辛かったけれど、私は乗り越えることができた」という、かけがえのない自信を得ることができます。
この自信は、これから先の人生を生きる上での大きな力となり、困難に直面したときでも、「今度は大丈夫だ」と思えるようになります。
トラウマを抱えながらの人生は、とても苦しいものです。しかし、その視点を少し変えることで、心穏やかな日々を取り戻すことは可能です。
「自分は心の弱い人間だ」と諦めないでください。あなたの心は、あなたが思っている以上に、強くしなやかなものです。
大阪聖心こころセラピーでは、トラウマや心的外傷に精通したカウンセラーが、あなたの心に寄り添い、安全で確実な方法で、あなたがトラウマを克服し、心穏やかな日々を取り戻すお手伝いをさせていただきます。
一人で抱え込まず、まずは一度、お気軽にご相談ください。
参考文献・参考資料
- 飛鳥井望(監修)(2007)『PTSDとトラウマのすべてがわかる本』 講談社
- ガーランド C.(著),松木邦裕(監訳)(2011)『トラウマを理解する』 岩崎 学術出版社