HSPカウンセリング

HSP(Highly Sensitive Person/とても敏感で繊細な人)は、病気や障害ではなく「生まれ持った気質」として理解されています。【心理学者エレイン・N・アーロン博士によって提唱され、その特徴は主に4つの柱(DOES:深く処理する、過剰に刺激を受けやすい、強い共感性、些細な変化への感受性)にまとめられています。】 HSPの人は、芸術や文化など多方面で豊かな才能を発揮する一方で、その繊細さゆえに生活上の負担を抱えることもあります。大切なのは「治す」ことではなく、自分の気質を理解し、環境や考え方を工夫していくことです。

目次

『ガラスのハート』を持つあなたへ

「ガラスのハート」

「なぜあの人はそんなことも気づかないんだろう。」

「どうして私は、こんなにも些細なことまで気になってしまうんだろう。」

日々の生活の中で、そんな風に感じてはいませんか? 私たちは、気づかないうちに他人の言動や周囲の環境に敏感に反応し、心をすり減らしています。

例えば、こんな場面に心当たりはありませんか?

  • 誰かが置き忘れたゴミを見て、信じられないと感じる。
  • 場のぎくしゃくした空気に耐えられず、自分がなんとかしようと奮闘してしまう。
  • 些細な表情の変化から、相手の気持ちを深読みし、何か気に障ることを言ってしまったのではないかと不安になる。
  • 無神経な言動をする人に心を痛めながらも、嫌われたくないからと自分の意見を言えない。

こうした「生きづらさ」を感じているなら、それはあなたの繊細さゆえかもしれません。

繊細さゆえに、常にアンテナを張り巡らせ、ネガティブに捉えてしまう。それはまるで、ガラスのハートを必死に守りながら生きているようです。しかし、そのガラスのハートは、あなたの美しい個性そのもの。それを壊れやすいものとして恐れるのではなく、強化ガラスにしたり、光を透過させたり、時には跳ね返したりする方法を身につけることで、あなたの人生はもっと輝き始めます。

大阪聖心こころセラピーでは、あなたの繊細さを「生きづらさ」から「強み」へと変えるお手伝いをしています。

繊細さんの特性を知る|HSPは病気ではなく生まれ持った気質です

「HSP」という言葉を最近よく耳にするようになったかもしれません。HSPとは、Highly Sensitive Person(ハイリー・センシティブ・パーソン)の頭文字をとった言葉で、「とても敏感で繊細な人」を指します。

HSPは病気や障害ではなく、生まれつき持っている「気質」であり、一種の「概念」や「考え方」です。私たちは一人ひとり異なる個性を持っているように、この繊細さもまた、その人の個性の一つと捉えることができます。

HSPの気質を持つ人は、人口の1520%、つまり5人に1と言われています。この数字を聞いて、多いと感じますか?それとも少ないと感じますか?

私たちは無意識のうちに「自分と同じような見方や考え方を、他の人も持っているはずだ」と考えてしまいがちです。しかし、5人に4人はHSPではない気質を持っています。そのため、HSPの人が当たり前のように気付くことに、HSPではない人は気付かないということが起こり得ます。

「なぜこの人は平気で無神経なことが言えるんだろう?」

そう感じた経験があるなら、それは相手がHSPではない気質を持っていたからかもしれません。

HSPの傾向が強い人は、生きづらさを感じるほどに「どうして自分だけこんなに疲れてしまうんだろう」「心が弱い自分はダメだ」と、自分を責め立ててしまうことが少なくありません。しかし、その生きづらさは、HSPという気質に、他の要因が複雑に絡み合っている可能性があります。

その「生きづらさ」の根源を紐解いていくことで、HSPの気質との向き合い方が見えてきます。

あなたの繊細さを紐解く|HSPにみられる4つの特徴

HSPの気質は人によって現れ方が異なります。大きく分けて以下の4つの特徴があり、それぞれの特徴の強弱は人によってさまざまです。

1. 物事を深く考え、丁寧に情報処理を行う

HSPの第一の特徴は、「物事を深く考え、丁寧に情報処理を行う」ことです。

このタイプの人は、情報を徹底的に深く掘り下げて処理します。そのため、周りの人が気づかないような細かな点にも気がつき、多彩な知識を身につけていることが多いです。

  • お世辞や社交辞令の本質をすぐに見抜く。
  • 場の空気を素早く察知し、その場に合った行動ができる。
  • 物事の表面的な話ではなく、哲学的な深い話を好む。
  • さまざまな視点から物事を捉え、多角的な思考ができる。
  • 相手が本当に言いたいことの裏にある本音を読み取るのが得意。
  • 一度調べ始めると、とことん深掘りするため知識が豊富になる。
  • 一つの情報から10のことを想像し、考える能力がある。

この特徴が強く出ると、深く考えすぎて行動に移すまでに時間がかかったり、相手の思いや考えを読み解きすぎてしまい、疲弊してしまうことがあります。また、自己肯定感が低いと、どれだけ時間をかけて準備しても自信が持てず、不安に陥ることも少なくありません。

この特徴が生きづらさに繋がる原因は、自己肯定感の低さや他人との比較にあるかもしれません。

2. 五感から過剰な刺激を受けやすい

HSPの第二の特徴は、「過剰に刺激を受けやすい」ことです。

このタイプの人は、音、匂い、光、味、肌触りといった五感から入ってくる刺激を人一倍強く感じ取ります。

  • ヒールが床を叩く「カツカツ」という音が、頭に響いて不快に感じる。
  • 街の喧騒や人混みの騒音が苦手で避けてしまう。
  • 香水の強い匂いを嗅ぐと気分が悪くなる。
  • 些細な言葉に過剰に反応し、深く傷ついてしまう。
  • 本や音楽、映画などに感情移入しすぎて、心底疲れてしまう。
  • 気候の変化や特定の季節に体調を崩しやすい。

この特徴が強く出ると、日常生活に大きな影響が出ることがあります。例えば、満員電車で隣に座った人の香水の匂いで体調が悪くなったり、添加物の多い食べ物を口にするとお腹を壊したりすることもあります。

この特徴が生きづらさに繋がる原因は、刺激をシャットアウトする術を知らないことや、相手の言動に過剰に反応してしまう考え方にあるかもしれません。

3. 他者の感情に深く共感する

HSPの第三の特徴は、「他者の感情に深く共感する」ことです。

このタイプの人は、相手の感情をまるで自分のことのように感じ取ることができます。

  • 周りの人の雰囲気に合わせて自分の振る舞いを調整することが多い。
  • 相手が喜んでいると、自分のことのように嬉しくなる。
  • 人の話を親身になって聞き、深く理解することができる。
  • 怒られている人を見ると、自分が怒られているように感じて苦しくなる。
  • ドラマや映画の登場人物に感情移入し、まるでその場にいるかのように感じる。
  • 他人のつらい経験を聞くと、自分もつらくなってしまい、後々まで引きずることがある。

この共感力の高さは、大きな強みであると同時に、生きづらさの原因にもなり得ます。他人の感情に振り回されたり、自分と他人の境界線が曖昧になったりすると、疲弊してしまいます。

この特徴が生きづらさに繋がる原因は、自分と他者との心の境界線を引くのが苦手なことや、感情のコントロールがうまくできないことにあるかもしれません。

4. 些細な変化や刺激に敏感に反応する

HSPの第四の特徴は、「些細な変化や刺激に敏感に反応する」ことです。

このタイプの人は、ほんの小さな物音、相手のわずかな表情の変化、物の配置のちょっとした違いなど、他の人が気づかないようなことにも敏感に気がつき、驚いたり不安になったりします。

  • 服の肌触りやタグの位置が気になってしまう。
  • 生活の急な変化に対応するのが苦手で、すぐに動揺してしまう。
  • 小さな物音に過剰に驚き、びくっとしてしまう。
  • 相手の声のトーンや、仕草の小さな変化に敏感に気づく。
  • 挨拶が返ってこないと「何か怒らせたかな?」と不安になる。
  • 隣の席の会話までしっかりと聞こえてしまい、集中できない。

この特徴が強く出ると、常に神経がすり減るような疲れを感じたり、些細な出来事からネガティブな妄想を膨らませてしまい、常に不安を抱えてしまうことがあります。

この特徴が生きづらさに繋がる原因は、目の前の事実を深読みしすぎたり、妄想を膨らませすぎてしまうことにあるかもしれません。

生きづらさの根源を探る|HSPの裏に隠された過去の経験

「過去の経験を振り返る」

あなたが感じる生きづらさは、HSPの気質が持つ繊細さに、過去の経験や心の癖が複雑に絡み合っている可能性があります。HSPは、生まれ持った性質であり、「治す」ものではありません。しかし、その特性を悪化させている要因を理解し、向き合うことはできます。

大阪聖心こころセラピーでは、HSPの生きづらさの背後にある「隠れた問題」にも焦点を当て、根本的な解決を目指します。

1. 自己肯定感の低さ

HSPの気質を持つ人が自己肯定感が低い場合、深く丁寧に情報を分析しても「こんなことを言ったら変に思われるのではないか」という不安に囚われ、自分の意見を言えなくなってしまうことがあります。完璧主義の傾向も相まって、物事を深く考え抜いたとしても、結果に自信が持てず、行動を起こせないという悪循環に陥ってしまうことも少なくありません。

この問題を解決するには、認知行動療法などを通して、非合理的な思考パターンを修正し、自分自身の価値を認める練習をすることが有効です。

2. アダルトチルドレンや愛着障害

幼少期に親の機嫌や動向を敏感に察知しながら育ったHSPは、アダルトチルドレンや愛着障害を抱えている場合があります。この場合、相手のわずかな表情の変化を決して見逃さず、怒っている人を見ると必要以上に恐怖を感じてしまいます。また、「自分がなんとかしなければ」という過剰な責任感から、他者との健全な関係性を築くことが難しくなることもあります。

この問題を解決するには、インナーチャイルドを癒すセラピーや、健全な愛着関係を築くための心のケアが必要です。

3. 認知の歪み

過去に、ありのままの感情を受け止めてもらえなかった経験や、コミュニケーションが取りにくい環境で過ごした経験があるHSPは、物事の捉え方や考え方が歪んでしまう「認知の歪み」を抱えていることがあります。その結果、感情のコントロールが不安定になり、些細な出来事をネガティブに捉え、自分を追い詰めてしまう傾向が強まります。

この問題を解決するには、客観的な視点を養い、ネガティブな思考パターンから抜け出すためのトレーニングが有効です。

これらの問題は、放置するとうつ病、不安障害、摂食障害などを引き起こす可能性もあります。HSPの気質だけに注目するのではなく、その生きづらさの原因を根本から見つけていくことが、より良い人生を送るための第一歩です。

繊細さを輝く才能に変える|HSPを長所として活かす方法

「繊細さを長所に」

HSPは、ネガティブなことばかりではありません。むしろ、繊細だからこそできること、敏感だからこそ得られるものがたくさんあります。あなたの「ガラスのハート」を、かけがえのない宝物へと変えていきましょう。

1. 丁寧な心配りと共感力は人間関係を豊かにする

HSPは、相手の表情や仕草の小さな変化から、その人の気持ちを深く読み取ることができます。この能力は、相手の心に寄り添い、適切な行動や細やかな気配りとして表れます。

  • 「いつもよく気がつくね」「〇〇さんがいてくれると安心する」と言われることが多い。
  • 相手の気持ちを深く理解できるため、聞き上手として信頼される。
  • 人からの相談を親身になって聞くことで、相手の不安な気持ちを和らげることができる。

この特性は、カウンセラー、セラピスト、看護師、介護士など、人の心に寄り添う仕事で大きな強みとなります。しかし、「いい人」を演じすぎて疲れてしまうのであれば、無理をして人と関わることをやめ、自分を守る術を身につけることが大切です。

2. 多彩で細やかな発想は豊かな創造性を生み出す

HSPは、感受性が非常に豊かです。敏感に反応しやすいからこそ、芸術や文化などさまざまなことで心を動かされ、感銘を受けたり共感したりすることができます。

  • 緻密で深い情報処理能力があるため、知識が豊富で多角的に物事を捉えられる。
  • クリエイティブな分野で活躍するHSPは多い。
  • 物事の本質を見抜く力があるため、問題解決能力に優れている。

この特性は、企画、研究、デザイン、作家など、深い思考や豊かな発想力が求められる分野で大きな力を発揮します。

あなたの心を温かく包む|HSPへの理解を深めるために

「心を温かく包む」

「気にしすぎだよ」「そんなに考えなくても大丈夫だよ」――。

HSPではない人にとっては、何気ない励ましの言葉かもしれません。しかし、HSPにとっては、こうした言葉が「自分はダメだ」という自己否定につながり、特性を悪化させてしまうことがあります。

HSPは5人に1人の割合で存在します。この事実を理解することは、相互理解と自他尊重の第一歩です。

仕事関係

HSPの人は、丁寧な仕事や多角的な視点を持つ強みがある一方で、人一倍時間やエネルギーを必要とすることがあります。一人で抱え込まず、信頼できる同僚や上司に相談し、自分に合った働き方を見つけることが大切です。

友人関係

HSPは人から影響を受けやすく、友達の何気ない言葉に傷ついたり、賑やかな場所で疲れてしまったりすることがあります。友人側がHSPの特性を理解し、「疲れたらいつでも言ってね」「少し休憩しようか」と声をかけてあげることで、HSPの人は心穏やかに過ごすことができます。

カップル・夫婦関係

親密な関係になるほど「言わなくてもわかってほしい」という気持ちが強くなりがちです。しかし、HSPであっても、相手の心を全て読み取ることはできません。お互いの考えや気持ちを言葉で伝え合う努力をすることで、すれ違いを防ぎ、より深い関係を築くことができます。

繊細なあなたが生きやすい人生を手に入れるために

「生きづらさにともに向き合う」

「なぜ私だけこんなにナーバスなんだろう」「心が疲れやすいのは、自分のメンタルが弱いせいだろうか」と、これまで悩んでいませんでしたか?HSPという概念を知ることで、「だから生きづらかったのか」と腑に落ち、心が少し軽くなった方もいるかもしれません。

大阪聖心こころセラピーでは、HSPの特性を活かし、より楽しい人生を送るためのサポートとして、主に以下の3つのケアを提供しています。

1. 思考の再構築

HSPは、感じ取ったことのすべてが事実であると捉えてしまいがちです。しかし、「裏切られた」「嫌われた」と感じることは、あくまでもあなたの主観的な感情であり、必ずしも事実とイコールではありません。認知行動療法などを通して、思考の癖を修正し、客観的な視点から物事を捉える練習をすることで、より納得のいく行動を選択できるようになります。

2. 感情の安定

過去の心の傷や、常に抱えている不安や緊張感は、ネガティブな感情を増幅させます。大阪聖心こころセラピーでは、怒りや不安、悲しみといった感情への対処法を学び、心身をリラックスさせる心理療法などを通して、心の傷を癒やしていきます。心が安定することで、ポジティブな感情も生まれやすくなります。

3. 身体のケア

HSPの生きづらさには、心だけでなく身体のケアも欠かせません。ヒプノセラピーや自律訓練法、呼吸法などを取り入れることで、心身に宿った緊張を和らげることができます。また、光に敏感ならサングラスやアイマスクを、音に敏感なら耳栓やヘッドフォンを使用するなど、自分に合ったツールを工夫することで、より快適に生活できるようになります。

「生きづらさ」の原因がHSPの繊細さにあると気づいた今が、変化のチャンスです。大阪聖心こころセラピーのカウンセリングで、専門家と一緒に自分と向き合い、HSPの特性を活かした自分らしい人生を歩み始めませんか?

大阪でHSPの悩みや相談は、聖心こころセラピーへお越しください。HSPに精通したカウンセラーが、あなたの「生きづらさ」に寄り添い、解決へと導きます。安心してお気軽にご相談ください。

参考文献・参考資料

  • アーロン, E. N.(著),冨田香里(訳)(2015) 『ささいなことにもすぐに「動揺」してしまうあなたへ。』 講談社
  • 武田友紀(2018) 『「繊細さん」の本』 飛鳥新社

この記事を書いた人

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

この記事の監修者

公認心理師・臨床心理士。教育支援センターやスクールカウンセラーとして不登校支援や保護者相談、教職員へのコンサルティングに従事。心療内科や児童発達外来にて心理検査・カウンセリングも担当。現在はオンラインカウンセリングや、心理学と仏教を融合させたセミナー活動などを行っている。

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