PTSDカウンセリング

心的外傷後ストレス障害、PTSDでは「恐怖と怯え」に繰り返し襲われ通常の生活が困難となる。大切な人の不慮の死、大災害、犯罪などが起因となり、瞬間的ショック性ストレスが脳裏に刻まれ離れない。 浮気やモラハラなどでも

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目次

PTSDとは?心を深く傷つけるストレスの正体

「孤立と孤独」

心的外傷後ストレス障害、通称PTSDは、生命の危険にさらされるような強い衝撃的な出来事や、人としての尊厳を深く傷つけられるような体験が原因で起こる心の病です。このような体験をトラウマと呼びます。トラウマとなる出来事には、大規模な事故や自然災害、犯罪被害、虐待などが含まれます。

トラウマは、私たちの心に深い傷を残し、その出来事をうまく整理したり、乗り越えたりすることができなくなると、日常生活にさまざまな支障が出てきます。この状態が1ヶ月以上続く場合、PTSDの可能性があると考えられます。さらに、症状が3ヶ月以上続く場合は、慢性的なPTSDと診断されることがあります。

PTSDと複雑性PTSD、何が違う?

かつて、PTSDは一度きりの命に関わるような出来事からのみ発症すると考えられていました。しかし、近年では、いじめや虐待など、長期間にわたって繰り返されるつらい体験が原因で起こる症状も注目されています。これは複雑性PTSDと呼ばれ、PTSDとは異なる特徴を持っています。

例えるなら、一度の強烈なパンチがPTSDだとすれば、複雑性PTSDは、じわじわと効いてくるボディブローのようなものです。最初は気づかなくても、徐々に心がむしばまれていき、後からつらさが増していくのが複雑性PTSDの特徴です。

また、直接トラウマ体験をしていなくても、その出来事をそばで見たり聞いたりしただけで、心理的な影響を受け、PTSDにつながる可能性もあります。このことから、PTSDは波及性が高い障害とも言えるでしょう。

注意が必要なのは、衝撃的な出来事の直後に現れる反応がすべてPTSDと診断されるわけではない点です。同じような症状でも、4週間以内に治まる場合は急性ストレス障害(ASD)と呼ばれます。

PTSDが社会に認知されるまでの道のり

PTSDという言葉が日本で広く知られるようになったのは、1995年の阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件、2011年の東日本大震災など、大規模な出来事がメディアで繰り返し報じられるようになったことがきっかけです。

海外では、戦争から帰還した兵士たちの多くがPTSDを発症していたことが明らかになり、この心の病が社会全体に認知されるようになりました。

また、親しい人から衝撃的な体験を聞かされたり、その出来事の断片に触れたりするだけでも発症することが知られています。

トラウマ体験から半年以上経ってから初めて症状が現れるケースもあり、PTSDはさまざまな側面から注目を集めています。

PTSDの代表的な4つの症状

「PTSDの苦しみ」

PTSDは、主に以下の4つの症状に分類されます。

  1. 再体験(フラッシュバック)
  2. 回避と感情の麻痺
  3. 認知と気分の陰性変化
  4. 過覚醒

1. 再体験(フラッシュバック)

トラウマとなった体験を、思い出したくないと願っても、意に反して鮮明に思い出してしまうのが再体験、またはフラッシュバックです。映像や音としてだけでなく、その時の匂い、痛み、感覚として現れることもあります。

フラッシュバックは、まるでその出来事をもう一度体験しているかのような苦痛を伴います。恐怖や混乱に陥り、パニック状態になったり、部屋から出られなくなったりすることもあります。睡眠中には悪夢として現れることも少なくありません。

通常、記憶は時間の経過とともに薄れていくものですが、フラッシュバックする記憶は、かえって時間と共に鮮明さを増していくのが特徴です。

2. 回避と感情の麻痺

PTSDの症状の一つである回避と感情の麻痺は、「また怖い目に遭うかもしれない」「フラッシュバックが起きたらどうしよう」という不安から、トラウマを連想させる場所や状況を徹底的に避ける行動です。

例えば、列車事故を体験した人は電車に乗ることを避け、人混みが怖いと感じることもあります。このような回避行動が生活の中心となり、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

また、自分の心を守るために、まるで感情が麻痺したかのように、喜怒哀楽を感じられなくなったり、現実感が失われたりすることもあります。

3. 認知と気分の陰性変化

トラウマ体験や長期間にわたるストレスによって、必要以上に否定的な考えや信念を持つようになるのが認知と気分の陰性変化です。

これまで楽しめていた趣味や人間関係に興味を失い、他人と関わることを避けるようになり、孤立感を深めることもあります。集中力がなくなり、表情が乏しくなり、負の感情から抜け出せない悪循環に陥ってしまうこともあります。

活発だった人が別人のように変わってしまうことも少なくありません。幸福感、喜び、優しさといったポジティブな感情を感じにくくなるのがこの症状の特徴です。

4. 過覚醒

過覚醒とは、些細な出来事でもトラウマを連想させるものがあると、過剰に恐怖を感じてしまう状態です。たとえば、電車事故を連想させる音や、少し大きめの物音に敏感に反応してしまうなどです。常に不安感が消えず、イライラしたり、おびえたりすることもよくあります。

心が休まることがなく、不眠症に陥ることも多々あります。このつらさを和らげるために、アルコールや睡眠導入剤に頼るようになり、アルコール依存症や薬物依存症につながるケースも少なくありません。

これらの4つの症状が1ヶ月以上続き、日常生活に支障をきたしている場合、PTSDと診断されることがあります。症状が長引くと、人生を楽しむことができなくなり、積極性や充実感が失われ、うつ病などの二次的な心の病を引き起こすこともあります。

また、「あの出来事を招いたのは自分が悪い」と自分を責め、PTSDに陥っている自分自身をさらに追い込んでしまうこともあります。

「複雑性PTSD」:長期間の苦痛がもたらす心の傷

複雑性PTSDは、「複合的な心的外傷後ストレス障害」とも呼ばれ、いじめや家庭内での虐待など、長期間にわたって人格や自尊心を傷つけられる出来事が続くことで生じる症状です。

この症状は、最近になってPTSDとは異なるものとして認識されるようになりました。幼少期からのネガティブな体験が積み重なって発症するため、すぐに症状が現れるわけではありません。しばらく時間が経ってから(例えば、大人になってから)症状が出始めることも少なくありません。

複雑性PTSDの要因となる体験は一つとは限らず、複合的であることが多いため、「複雑性」と呼ばれます。

この影響で、極端な考えや衝動的な行動を伴うパーソナリティ症(障害)、自分が自分でないように感じる解離性障害、摂食障害、依存症などを引き起こすこともあります。

専門家と歩む回復への道:PTSDの治療法

PTSDの症状から抜け出し、自分らしい人生を取り戻すためには、専門家による適切な治療が不可欠です。

当セラピーでは、患者様一人ひとりの状態に合わせた心理療法を用いて、心の回復をサポートします。

認知行動療法

認知行動療法は、国際的にPTSD治療に推奨されている心理療法の一つです。

この療法では、カウンセラーとの対話を通じて、トラウマが何であり、なぜトラウマになっているのかを理解し、少しずつ心の整理をしていきます。

自分のつらい体験と向き合っていくため、患者様の気持ちが不安定になることもあります。そのため、カウンセラーと密に相談しながら、慎重に進めていきます。専門家が行わなければ症状を悪化させる可能性もあるため、信頼できる専門機関で受けることが重要です。

EMDR(眼球運動による脱感作および再処理法)

EMDRは、2000年に国際トラウマティック・ストレス学会で有効な治療法として認定された心理療法です。

特定の眼球運動をさせながら過去のトラウマを思い出すことで、心の中でうまく整理されていなかった体験を、改めて受け入れられるように整理し直します。

短期間で効果が見込めること、そしてトラウマを細かく思い出す必要がないため、患者様にかかるストレスが少ないことが大きな利点です。

デブリーフィングには注意が必要

かつてPTSDの予防法として考えられていたデブリーフィングは、現在では推奨されていません。これは、震災などの直後に体験した出来事を詳細に語らせる方法ですが、かえって症状を悪化させる可能性があることが明らかになっています。つらい体験を安易に語らせることが、必ずしも良い結果につながるわけではないことを理解しておく必要があります。

トラウマと向き合い、自分自身を大切にする

「回復と希望」

PTSDは、誰もがなりたくてなるものではありません。命の危険を感じるような出来事に遭遇したとき、体が無意識に自分自身を守ろうとして起こる、いわば生理的で正常な反応です。しかし、それが何ヶ月も続き、生活に支障をきたすようになると、自分を責めてしまう人も少なくありません。

「自分が悪かったのではないか」という思い込みは、PTSDの症状の一つです。自分を責めすぎたり、過剰に期待したりするのはやめましょう。怖かった体験をしたときに誰にでも起こりうる反応なのだと理解することが大切です。

無理に人と会ったり、飲酒や喫煙に走ったり、睡眠や食事を減らしたりすることは、症状を悪化させる原因になります。まずは心と体を休めることに専念しましょう。

周囲の人の理解と協力が回復を後押しする

PTSDの回復には、家族や友人といった周囲の人の理解と協力が不可欠です。つらい体験をした本人を責めたりせず、じっくりと話を聞いてあげることが大切です。本人が同じ話を何度も繰り返したり、取り乱したりしても、落ち着いて寄り添ってあげてください。

ただし、本人が話したくないときに、無理に聞き出そうとすることは避けるべきです。本人の気持ちに寄り添い、話したいときに話せる環境を整えることが、症状の悪化を防ぐことにつながります。

複雑性PTSDの原因が家族や友人にある場合は、その人たちから距離を置くことも一つの選択肢です。自分が苦しまないで済む環境を整えることが、何よりも優先されるべきことです。

怒鳴り声もトラウマに?マルトリートメントが与える影響

「感情の麻痺」

近年、子どものPTSDが注目されています。身近な大人に叱責されたことが原因でPTSDを発症するケースも少なくありません。大声で怒鳴られる恐怖から、真っ黒な絵を描いたり、夜眠れなくなったり、大人になっても夜尿症が続いたりすることもあります。

このような、子どもの心身に悪影響を及ぼす不適切な養育はマルトリートメントと呼ばれます。マルトリートメントは、親にそのつもりがなくても、子どもに恐怖心やストレスを与えることで、心の傷となります。

マルトリートメントは、発達途中の子どもの脳に影響を与えることが分かっています。学習意欲の低下、引きこもり、大人になってからの精神疾患発症リスクを高める可能性があります。

親も人間であり、自分の感情をコントロールできずに怒鳴ってしまうこともあるでしょう。また、自分自身も同じような養育を受けて育ったために、その行為が子どもに与える悪影響に気づいていないケースもあります。

しかし、どのような言葉や行動が子どもを傷つけるのかを理解し、不適切な言動を改めていくことが大切です。マルトリートメントは身体的な暴力だけでなく、精神的な暴力も含まれます。子どもを傷つけていないかをしっかりと見つめ直す必要があります。

PTSDを乗り越え、自分らしい人生を取り戻すために

「支援とつながり」

PTSDの症状によって、好きだったことへの興味を失い、幸福感を感じられなくなることがあります。表情が乏しくなり、会話が減り、食欲がなくなるなど、日常生活にも様々な支障をきたします。

過去に受けた心の傷を消し去ることはできません。しかし、その傷を乗り越え、自分らしい人生を再び歩むことは可能です。

当セラピーでは、PTSDに精通したカウンセラーが、一人ひとりの患者様に寄り添い、苦しみからの解放をサポートします。

つらい出来事を話すことは苦しいことですが、専門家と共に自分の気持ちを整理していくことで、少しずつ心が軽くなっていきます。

「こんな風に感じているんだ」「こう考えたらいいのかもしれない」

カウンセリングを通じて、これまでの考え方の偏りに気づき、新しい視点を持つことができるようになります。。

トラウマと共存するということ

つらい体験を無理に忘れようとするのではなく、トラウマと共存していくという考え方も大切です。トラウマを乗り越えるためには、新しい経験を積み重ねて、少しずつ自分の世界を広げていくことも重要です。

新しい趣味を始めたり、信頼できる友人や家族と過ごしたりすることで、つらさだけでなく、幸福感も感じられるようになります。

トラウマは、あなたの人生のすべてではありません。日々の生活の中で、小さな幸せを実感していくことで、少しずつPTSDは回復に向かっていきます。

誰にも言えなかった苦しみを、今、専門家へ話してみませんか?

「大きな災害や事故に遭ったわけではないけれど…」「夫の浮気や親からの心ない言葉で傷ついた」

そうした心の傷からPTSDを発症し、当セラピーを訪れる方も多くいらっしゃいます。

PTSDは、あなたのせいではありません。

長年の苦しみから解放され、自分らしい日常を取り戻すために、まずは一歩を踏み出してみませんか。私たちは、あなたが抱える痛みを理解し、回復への道を共に歩む準備ができています。

聖心こころセラピーでは、PTSDからの回復を目指し、熟練のカウンセラーが、あなたの抱える苦しみに真摯に向き合い、心の整理をサポートします。

これまでの人生で抱えてきたつらい気持ちや、誰にも話せなかったことを、安心して話せる場所がここにあります。

越えられないと諦めていたつらさから、今こそ解放されましょう。

参考文献・参考資料

  • 飛鳥井望(監修)(2007)『PTSDとトラウマのすべてがわかる本』 講談社
  • 金吉晴・小西聖子(2015)『PTSD(心的外傷後ストレス障害)の認知行動療法マ ニュアル(治療者用)』 厚生労働省
  • アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神 疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院

この記事を書いた人

榊原カウンセラーは臨床心理士・キャリアコンサルタント・管理栄養士。日本福祉大学大学院修了(心理学修士)、名古屋学芸大学卒。公立小学校での栄養教諭を経て、現在は心理・教育・栄養の複合的な視点から支援活動を行う。日本心理学会・日本心理臨床学会会員として、心の健康や対人関係に関する情報発信・執筆にも力を注いでいる。

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