離人症カウンセリング

離人症の専門カウンセリング|臨床心理士・公認心理師が解決に導きます
離人症専門カウンセリング
臨床心理士・公認心理師
が解決に導きます
離人症とは自分が自分で無い感覚。「心ここにあらず」程度なら誰しも経験はあるが、離人症では自分から離れ俯瞰的に自分を見ている不思議な感覚や現実を現実として捉えられない感覚に支配され繰り返される状態を離人症と言う。
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当カウンセリングは、診断や治療といった医療行為を行うものではありません。臨床心理士や公認心理師といった専門資格を持つカウンセラーが、認知行動療法などの心理療法を用い、様々な問題で悩む方々に対し、ご自身の心と向き合い、不安のメカニズムを理解し、日常生活をより穏やかに過ごすための専門的なサポートを提供します。
本記事は、アメリカ精神医学会(APA)が発行する『DSM-5-TR:精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版 改訂版』に基づき、臨床心理士が専門的知見のもとに執筆・監修しています。本内容は診断や医療行為を目的としたものではなく、カウンセリングにおける理解を深めるための情報提供としてご利用ください。
離人症とは?自分と世界が曖昧になる感覚とその原因、向き合い方

「自分から離れていくような感覚」
「心ここにあらず」という感覚は、多くの人が経験するものです。仕事でミスをしてぼんやりしたり、考え事をしていて目の前のことに集中できなかったり。しかし、離人症は、そのレベルをはるかに超えた、まるで自分自身が“ここ”にいないような、現実感が薄れていく不思議な感覚が繰り返し現れる心の状態です。
この感覚は、まるで自分の心と体がバラバラになってしまったような、あるいは、自分が自分ではないような感覚です。自分をまるで映画のスクリーン越しに観ているような、現実の世界と自分の間に一枚の膜があるような違和感。痛みや感情も、直接感じているというよりは、どこか遠くで起きている出来事のように感じられます。
なぜ、このような感覚が起きるのでしょうか。その背景には、人それぞれに異なる原因やきっかけが隠されています。この記事では、離人症の症状、原因、そして具体的な改善方法について、専門的な知見を交えながらわかりやすく解説します。
離人症の「不思議な感覚」がもたらす生きづらさ

「現実感の薄れた世界」
離人症の症状は、目に見えるものではないため、周囲に理解してもらうのが難しいこともあります。しかし、その奇妙な感覚は、日常生活に大きな影響を与え、さまざまな生きづらさを引き起こします。
離人症の主な症状例
- 現実感が薄れる感覚
- 周りの景色や音、人々の動きが、まるで夢の中の出来事のように感じられる。
- 馴染みのある場所や物が、初めて見たかのように感じられる。
- 自分と周囲の世界との間に、薄いベールがかかっているような疎外感がある。
- 自分自身が曖昧になる感覚
- 自分の体や声、感情が、まるで自分のものではないように感じられる。
- 鏡に映る自分が、自分ではない誰かのように見えることがある。
- 自分の記憶や行動が、他人事のように感じられる。
- 時間や空間の歪み
- 時間が早く進んだり、逆に止まってしまったように感じられる。
- 空間が歪んだり、遠近感が分からなくなったりすることがある。
これらの症状が頻繁に起こると、日常生活に大きな支障をきたします。例えば、仕事や勉強に集中できなくなったり、人間関係がうまくいかなくなったりすることがあります。また、「いつこの感覚が襲ってくるかわからない」という不安や、「自分は一体何者なのか」という問いが頭から離れず、精神的に不安定な状態に陥ることも少なくありません。
離人症の感覚は、一見すると「大したことない」ように思えるかもしれません。しかし、自分の人生の主人公であるはずの「自分」が、突如として舞台から降りてしまったかのような状態は、人生における大きな損失です。なぜ自分がここにいるのか、なぜこの感覚が起こるのかがわからず、深い孤独感を抱えてしまうこともあります。
人生の主役として、自分が望む道を歩んでいくためにも、この「不思議な感覚」に正面から向き合うことが大切です。
離人症の原因は「親子関係」に隠されていることが多い
離人症の背景には、幼少期の親子関係や対人関係の影響が関与することもありますが、それだけではありません。強いストレス体験、外傷体験(トラウマ)、うつ病や不安症(障害)といった他の精神疾患、さらには脳の働きや睡眠不足など、多くの要因が複雑に関係していると考えられています。
ここでは、特にご相談の多い親子関係が原因となっているケースを取り上げていきます。
離人症を引き起こす親子関係の例
- 精神的虐待やネグレクト
- 常に親から否定的な言葉を浴びせられたり、過度な期待を押し付けられたりした経験。
- 親の気分によって態度が変わり、安定した愛情や安心感を得られなかった経験。
- 育児放棄(ネグレクト)により、十分な精神的・身体的ケアを受けられなかった経験。
- 過干渉や過保護
- 親が子どもの行動や考えをすべて管理し、自分で物事を決める機会が少なかった。
- 親の期待に応えようと、常に自分を抑圧して生活してきた。
こうした環境で育った子どもは、親の叱責やプレッシャーから自分を守るために、無意識のうちに「心ここにあらず」の状態を作り出すことがあります。例えば、親に怒られているときに、まるでその場にいないかのように、別のことを考えてやり過ごそうとする防衛反応です。
この防衛反応は、一時的に心のダメージを和らげる効果があります。しかし、それが繰り返されるうちに、心と体が本当に分離してしまったかのような感覚が定着し、強いストレスや不安を感じた時に、離人症状として現れるようになるのです。
親子関係の修復が離人症改善の第一歩
親との関係で形成された「自分を守るための防衛反応」は、大人になってからも、ストレスや困難な状況に直面したときに、無意識に発動してしまうことがあります。
この悪循環を断ち切るためには、まず、自分が抱えている生きづらさの根源が、幼少期の親子関係にあることを理解し、受け入れることが重要です。そして、その原因に正面から向き合い、適切な方法で心の傷を癒していくことが、離人症を克服する第一歩となります。
親子関係が原因で離人症に悩む方は、自分ひとりで解決しようとせず、専門家の力を借りて、過去の出来事と向き合っていくことをおすすめします。
離人症になりやすい人の特徴と「心のSOS」

「膜越しの世界」
離人症に悩む人には、いくつかの共通した性格やパーソナリティが見られることがあります。これは、特定の性格タイプが離人症になりやすいというよりも、特定の生き方や考え方が、心の防衛反応を促しやすい傾向にあるためと考えられます。
離人症の背景にあるパーソナリティタイプ
- 真面目で優しい完璧主義タイプ
- 何事にも真面目に取り組み、周囲の期待に応えようと努力する。
- 他人の気持ちを察し、気配りができるため、人間関係でストレスを抱えやすい。
- 小さな頃から親の期待を背負い、自分の感情や欲求を抑えてきた経験がある。
- 平和主義で争いを避けるタイプ
- 人との衝突を避け、穏やかな日々を望む傾向がある。
- 自分の意見を主張するよりも、誰かが我慢すれば丸く収まると考えてしまう。
- 不快な感情や怒りを抑圧し、ストレスを溜め込みやすい。
- やる気がなく怠惰に見えるタイプ
- 離人症の症状により、物事に集中できず、ぼんやりと過ごすことが多い。
- 周囲からは「やる気がない」「怠けている」と誤解され、孤立してしまうことがある。
これらの性格は、決して悪いものではありません。しかし、自分の心の声に耳を傾けず、無理をしてしまうと、心は「これ以上は無理です、受け取れません」というSOSを発します。離人症の感覚は、まさにこの心のSOSなのです。
離人症の症状は、「自分を守るために感覚を鈍らせる」という心のメカニズムによって引き起こされます。つまり、離人症の感覚が起こる時、それは自分自身に無理をさせないようにしているサインなのです。
自分の心の声に耳を傾ける練習
この心のSOSを無視したり、無理に乗り越えようとしたりすると、症状はさらに悪化することがあります。大切なのは、離人症の感覚を「怖いもの」「不気味なもの」として捉えるのではなく、「自分の心が発しているメッセージ」として受け止めることです。
- 離人症の感覚を感じたら、無理に頑張ろうとせず、一度立ち止まる。
- 今やっていることを一時中断し、心を落ち着かせる時間を作る。
- 「この感覚が起こるのは、自分に無理をさせすぎているからかもしれない」と、自分自身を労るように意識してみる。
この練習を繰り返すことで、離人症の症状に振り回されるのではなく、自分の心の状態を客観的に観察し、コントロールする力を養うことができます。
離人症は他の心の病と合併しやすい

「疎外感と孤独」
離人症性障害は、単独でみられることもありますが、多くの場合、うつ病や不安障害、PTSDなど他の精神疾患と併存します。これらの症状が重なり合うことで、日常生活への影響が一層大きくなることがあります。
離人症とうつ病
うつ病は、強い無力感や自己肯定感の低さが特徴的な心の病です。うつ病を患う人は、「自分はダメな人間だ」と感じ、生きる意味を見失うことがあります。このような精神状態の時に、離人症の感覚が加わると、日々の生活はさらに困難になります。
- うつ病の症状例:
- 気分が沈み、何も楽しめなくなる。
- 食欲不振や睡眠障害が起こる。
- 極度の疲労感や倦怠感がある。
うつ病と離人症が合併すると、「自分は存在しない」という感覚と、「何も楽しめない」という空虚感が重なり、より深い孤独感に苛まれます。
改善へのアプローチ:
うつ病の治療は、離人症の改善にも繋がります。うつ病の原因となっているストレスや不安を和らげ、生活リズムを整えることで、心の安定を取り戻し、結果的に離人症の症状も軽減されることがあります。
離人症とPTSD
PTSDは、自然災害や事故、虐待やDVなど、強烈なトラウマ体験が原因で発症する心の病です。トラウマを再体験するフラッシュバックや、常に緊張状態が続くなどの症状が特徴です。
離人症の感覚は、このPTSDの症状を和らげるための防衛反応として現れることがあります。あまりに辛く、苦しい出来事を体験した時、心は「この出来事は、自分に起きていることではない」と認識することで、自分自身を守ろうとします。
改善へのアプローチ:
PTSDの治療では、安全な場所で、トラウマとなった出来事を少しずつ語っていくことが重要です。安心できる環境の中で、心に負った深い傷と向き合い、無理のない範囲で感情を解放していくことで、分裂していた自分自身が統合され、現実感をしっかりと感じられるようになります。
離人症の克服へ!自分らしい人生を歩み始めるための道しるべ

「自分を取り戻す希望」
離人症の「自分が自分でない感覚」や「現実感のない感覚」は、とても不気味で孤独なものです。誰に話しても理解してもらえないのではないかという恐れから、一人で抱え込み、さらに症状が悪化してしまうことも少なくありません。
しかし、離人症は決して治らない病気ではありません。適切な方法で自分自身と向き合っていくことで、必ず改善に向かいます。
離人症克服の鍵は「今ここにある現実」を生きること
離人症の根底には、過去の辛い経験や、親との関係で形成された生きづらさが隠されています。それを解決しないまま、症状だけを抑え込もうとしても、根本的な解決にはなりません。
大切なのは、「過去の自分」と向き合い、心の傷を癒すこと、そして「今ここにある現実」を主体的に生きることです。
具体的なアプローチ
- 「心のSOS」を受け取る練習をする:
離人症の感覚が起こった時、それは「頑張りすぎている」という心のサインです。無理をせず、一時的にでも休息をとるようにしましょう。
- 過去の自分と向き合う:
カウンセリングなどを通して、離人症の原因となった幼少期の経験や親子関係を振り返ってみましょう。過去の出来事を客観的に見つめ直すことで、現在の生きづらさの根源を理解することができます。
- 主体性を取り戻す:
小さなことでも構いません。自分の「好き」や「やりたい」という気持ちを大切にし、自分の意志で行動する練習をしましょう。例えば、「今日の夕飯は自分で作る」「今日は好きな音楽を聴く」など、些細なことからで構いません。
- 適切な心理療法を受ける:
認知行動療法などの心理療法は、離人症の改善に効果的です。自分の考え方や行動のパターンを見つめ直し、生きづらさを引き起こす考え方の歪みを修正していくことで、現実感をしっかりと感じられるようになります。
まとめ
離人症性障害は、自分の心を守ろうとする防衛反応の一つであり、とても辛い心の状態です。しかし、原因や背景を理解し、適切な支援や心理療法を受けることで、症状の改善や生活の質の向上が期待できます。一人で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。
「自分が自分でない感覚」に悩んでいる方は、一人で抱え込まず、ぜひ専門家にご相談ください。過去の生きづらさから解放され、自分らしい人生を歩み始めるために、一緒に一歩を踏み出してみませんか?
参考文献・参考資料
- 松下姫歌(2003)『心理臨床における離人症について』 京都大学大学院教育学研究科博士論文
- アメリカ精神医学会(著),日本精神神経学会(監訳)(2023)『DSM-5-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル テキスト改訂版』 医学書院